告訴事件の犯罪類型と特徴

  
以下は一例となります。
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1:性犯罪

(1)不同意わいせつ(刑法176条)不同意性交等(刑法177条)
 告訴事案として多いのは,被害者が加害者と一定の人間関係にあるケースが多く,ナンパされた関係,婚活サイト利用者,パパ活の関係,元交際者,職場同僚,上司部下,友人の友人,営業担当者と取引先担当者,宗教指導者と信者などです。
 夜道で出くわした通り魔的な案件や電車内の痴漢案件は上記に比べると告訴の相談案件としては少ない印象です。

(2)旧・準強制わいせつ,準強制性交等(旧・刑法178条)
 法改正前の本罪を対象としますが、「準」というのはより軽いという意味ではありません。以前,ある報道機関の社会部の記者がこの意味を理解していないことがありました。
 暴行脅迫手段によらずの抗拒不能等に乗じたり抗拒不能にさせて犯行に及ぶものであり,「欺したり分からない状態を利用して被害を与える」という類型です。詐欺的性犯罪というのが理解しやすいでしょう。 筆者はこの類型にとても詳しいです。

■ 物理的抗拒不能類型

(ア)薬理作用型
 睡眠薬を飲まてぐったりさせて被害に遭うのが典型です。
加害者と酒を飲んだり,食事をする親しい間柄のケースが多いです。
これは,被害者は正気に戻ると「やられた」と気づきますので,睡眠薬を飲ませる場合などはその後に警察にすぐに行くと睡眠薬成分が体内から出るかどうかの検査をします。犯行と被害申告の時間的間隔は短く,睡眠薬成分検出など物証もありがちです。

(イ)酩酊乗じる型
 加害者と飲酒して酩酊し,ホテルや被害者宅で被害に遭うケースです。
これも加害者と酒を飲んだり,食事をする親しい間柄のケースが多いです。
これは,被害者は正気に戻ると「やられた」と気づきますので,警察にすぐに行きます。犯行と被害申告の時間的間隔は短く,アルコールが残っている状態ではそれなりの濃度検出など物証もありがちです。

(ウ)睡眠型
 寝ている間に被害に遭うケースです。
ただ,寝ているだけではすぐに気づくものですので酒が入っている(イ)のケースと同様のケースが多いでしょう。

■ 心理的抗拒不能型

(ア)対価誤認型
 加害行為に当たることを応じることは,女優として売り出すために必要不可欠なことだと欺言を用い,誤信させて応じさせるような場合です。
 この類型は芸能関係で被害者がスカウトや入団・事務所入所されたての未成年や若い方,加害者はマネージャー,芸能事務所の経営者,先輩の俳優などであることが特に多く,CMスポンサー企業の役員という場合もあります。
応じることが必要だと誤信しており心理的に抵抗できません。
 この場合は,生理的には嫌悪感を持っていますが,対価に関する欺言の内容が真実であるならば,被害者の生活や成功に嫌悪感を上回る重要性があり,それを信じ込むことで被害者が加害行為を必要悪としての正当化をしています。
 被害者が被害を認知するまでには,相応の時間がかかりますが,認知しても力関係があるので被害を訴えにくい場合があります。

(イ)マインドコントロール型
 生活の多くを支配され,心理的に従属しているような間柄で起こります。
マインドコントロールを脱しないと被害を被害と認識できる正常な心理状態は戻りませんので認知がかなり遅れます。

(ウ)信仰型
  被害者が信徒,加害者が宗教家という関係で散見され,加害行為に応じることがその宗教における教義で必要なことだと言われ,被害者は信仰上必要なこととして応じている場合です。被害者は対価的な利益を得るという考えはありません。
 被害者が,信仰を捨てていない場合には,教義との関係での誤りに気づくほどの研鑽がされたか,外部からの忠告等で誤りを理解した場合に認知します。信仰を捨てた場合には認知しやすいです。
 この類型は,信仰的に正しいことをしているという認識でいるために,被害の認知がとても遅くなりがちであり,周りの方の支援を要してようやく認知できることも多いです。

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2:詐欺

(1)多種多様な類型
 詐欺には実に様々な類型があります。
 ・被害者の利得心を利用するもの
  投資詐欺,原野商法・・・
 ・下請など取引先によるもの
  架空の代金請求や水増請求・・・
 ・従業員によるもの
  架空の実費精算など

(2)債務不履行ではダメ
 一般に欺されたと言えるような案件でも債務不履行では詐欺罪に問えません。
加害者が被害者に金を出させるための何らかの説明をした時点で説明どおりのことをする意思または能力がないことが必要です。
 加害者は説明どおりのことをする予定でいたが事情が変わってできなくなってしまったという場合には詐欺の立件は困難になります。

(3)どういう証拠が欲しいか
 一般にないことの証明は困難と言いますが,ある程度それが求められてくる場合があり,「ないものをあると嘘を言う」のがこの犯罪類型だからこそのことでしょう。
 例えば,下請による架空の建築現場の工事代金請求では,その工事が存在しないことというないことの証明に近いことを求められます。
 加害者側の証拠からは請求書の記載内容の現場や注文者の実在などを調べたり,被害者側からは施工管理に関する工事台帳などを調べます。

(4)共犯者がいる場合
 下請など取引先による架空請求については,被害者の会社内部に協力者がいる場合があります。

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3:業務上横領

(1)会社で起こりやすい
 この類型は,典型的に会社で入出金などの資金管理に携わる者がよく加害者になります。
しかも,チェック体制が甘く,経営者がその従業員をとても信頼していたり,その従業員しか入出金管理に携わっていないなど,「高度な信頼」「単独の放任」の2つが組み合わさっているケースでよく起こります。

(2)経費支払を悪用する
 会社が払うべき経費税金の支払いをする書類を作成し,経費の支払いをしないで領得するという場合
支払先の指摘で発覚します。

(3)販促品の転売
 営業社員に配布された販促品のチケットなどのインターネットでの売却

(4)現金集金の横領
 50万円のリフォーム工事を受注し,顧客から50万円を現金で回収し,会社には25万円のリフォーム工事であったという書類を提出し,差額を領得する場合。
 この場合,契約,施工,回収を同一人に任せているからこそ起こります。

(5)証拠
 加害者の職務権限
 加害者の現金・預金・販促品などの管理状況
 本来の出金手順と加害者の出金手順の相違
 出金に使われた伝票類
 出金先の受領の裏付
 加害者の使途先調査 など

(6)整理
 横領行為が複数に及び,エスカレートして頻度も額も増えている(大胆になっている)ケースが多いです。
横領行為は一つ一つが業務上横領罪を構成し,犯罪事実一覧表で整理することが多いです。

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4 名誉毀損
 ネットやSNSでの名誉毀損は発信者が特定されていない段階では警察はなかなか動いてくれません。
警察が発信者を調べてくれるだろうという考えは間違いだとまでは言いませんが,実務の現場とは大きく異なり,警察が調べてくれると思い警察に相談に行ってもがっかりする結果となることがあります。

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5 強要
 謝罪を求めたり返金を求めるなどの行為が典型です。
強要の手段に逮捕監禁などのより重い犯罪が先行することもあります。

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6 業務妨害
 告訴事案の多くは偽計業務妨害罪です。
取引先を巻き込むもの,SNSで拡散することを企図した迷惑行為など多種多様です。

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